日本の神社や寺院には、縁切りや縁結びといった願掛けが行われる場所が多く存在します。その中でも、特に有名なのが東京都の「縁切榎」と京都府の「安井金比羅宮」です。これらの場所では、縁切りと縁結びという一見対立する願いが、一か所で叶うとされています。今回は、これらの事例を通じて、なぜ縁切りと縁結びが同時に行えるのか、その理由を探ってみます。
縁切榎の事例
まず、東京都板橋区にある縁切榎について見てみましょう。
元来は、木皮を相手に煎じて飲ませ、満願に際して小絵馬を奉納するというものであった。ところが現在では、そんなまだらっこしい手順は省略して、祈願をする時に小絵馬を奉納するように変化した。ちなみに祈願内容は、近世後期においては男女の縁切りか酒との縁切りに限られていたが、今日では世相を反映して、大嫌いな夫婦やサークル仲間というのも見られ、病気や貧困、トラブル、不登校との絶縁などが加わって、多様な様相が見て取れる。それに対応する形で絵馬の図柄も、榎を真中に男女が背中合わせに立つ形から、榎の切株に注連縄を張り巡らし、「善縁をむすび悪縁をたつ」と朱書きされたものに変化している。祈願内容の多様化に応じて、より汎用性のある図柄に切り替えたのである。こうして宗教施設側もそれなりの努力をしているのである。
松崎憲三; マツザキケンゾウ. < 付録> 縁結び・縁切り習俗の現在 (講演要旨). 民俗文化 No. 29 (2017. 10), 2017, 29: 423-429.
このように、縁切榎では縁切りの対象が多様化し、現代のニーズに合わせて変化してきました。これにより、悪縁を切るだけでなく、良縁を結ぶという二つの願いが共存するようになったのです。絵馬の図柄も「善縁をむすび悪縁をたつ」と変化し、縁切りと縁結びが一体となった儀式が行われるようになりました。
安井金比羅宮の事例
次に、京都府にある安井金比羅宮の事例を見てみましょう。
ストーカー気質の男に好かれてしまったり、遊び人の男を好きになってしまったり、見る目がなかったとも言えますが、とにかく男運が悪い時期がありました。
どうにかしなければ、と思っていたときに友人に「縁切り神社」として有名な「安井金比羅宮」を教えてもらいました。すがる思いで京都まで行き、縁切り縁結び碑をくぐりました。お守りも購入し、肌身離さず持ち歩くようにしていたところ、その後は変な男にひっかかることもなく、穏やかな生活がおくれるようになりました。
ただ、穏やかなままでいるのもつまらない。彼氏が欲しい。そう思い、今度は縁結びで有名な出雲大社へ行きました。こちらで購入したお守りを持ち歩き、出会いの場にも積極的に出かけるようにしていたところ、出雲大社参拝の2ヶ月後に運命の出会いが。その相手が、今の夫です。
神様、ありがとうございました。
安井金比羅宮の縁結び復縁口コミまとめ。
安井金比羅宮では、縁切りと縁結びの両方を行うことができることで知られています。この事例からもわかるように、縁切りによって悪縁を断ち切ることで、その後の良縁を引き寄せることができるのです。実際に、縁切りを行った後に良縁を求めて出雲大社を訪れた結果、良い出会いがあったという体験談もあります。
縁切りと縁結びが一か所でできる理由
これらの事例からわかるように、縁切りと縁結びが一か所でできる理由は、以下のようにまとめられます。
1. 悪縁を断ち切ることで良縁を引き寄せる: 縁切りは悪い縁を断ち切る行為であり、その結果として新たな良縁を引き寄せる効果があります。これにより、縁切りと縁結びが一体となった儀式が成立します。
2. 現代のニーズに合わせた変化: 縁切榎のように、縁切りの対象が多様化し、現代のニーズに合わせて絵馬の図柄や儀式の内容が変化しています。これにより、より多くの人々が縁切りと縁結びの両方を願うことができるようになりました。
3. 一体化された儀式: 縁切りと縁結びが一か所で行えるようにすることで、神社や寺院はより多くの参拝者を引き寄せることができます。これにより、縁切りと縁結びの両方を行いたい人々にとって便利な場所となっています。
まとめ
縁切榎と安井金比羅宮の事例から、縁切りと縁結びが一か所でできる理由を考察しました。悪縁を断ち切ることで良縁を引き寄せる効果や、現代のニーズに合わせた変化、一体化された儀式がこれを可能にしています。これらの神社や寺院を訪れることで、縁切りと縁結びの両方を願うことができ、新たな良縁を引き寄せる手助けとなるでしょう。